蒼夏の螺旋

   “そういう頃合いだから”
 


気がつけば来週はもうクリスマスで、
次の週は大みそか&はっぴにゅーいやあで。

 「早いよなぁ。」
 「何だ、今更。」

朝のばたばたのお供として、時計代わりに点けてたテレビだったが。
先週といい、今週といい、
途轍もない寒波に襲われてたの、
これでもかっと豪雪の様を映して伝えていたワイドショーが。
打って変わってというか、暢気なことにというか、
有名ホテルのクリスマスディナーだの
高級料亭のお正月メニューのお品書きだのと、
そういったグルメな話題を流し始めたのを眺めつつ。
いいお海苔があったんだと
ゾロよりは小さめのお手々で
それでも頑張って大きめのを握ったおにぎり、
しかも大当たりの鮭入りを、むぐむぐ頬張りながら、
しみじみしたお言いようをするルフィさんだったりし。

 「だってよ、さすがにクリスマスの予定は決めてくれたけど。」

そこはさすが某商社の企画部に所属する敏腕係長様で、
早くも聖バレンタインデーへの数社協賛イベントの段取りへと駆り出されつつ、
しっかり…有名パティシエの手になるクリスマスケーキと、
牛と豚と若鷄それぞれの、
いいお肉の絶品料理をキープしといてくださって。
美味しくて暖かなクリスマスディナーは、
まるきり心配要らないセッティング済みなのだけれども。

 「平日の当日は空いてんだろ?」
 「まあな。」

ややこしい省略だが、
天皇誕生日という祭日の翌日となる イブやクリスマスは平日であり、
なれば、イベント絡みの予測不能な実務はない身のはずだと言いたいらしい、
さすがはこなれて来た奥方で。

 「だったら なあなあ、
  どっかに出掛けてイルミネーションとか観ようよ。」

 「……………どしたんだ、お前。」

もう五つ目のお握りを、あぐりと平らげたそのまま、
そりゃあ可愛らしく童顔をほころばせるルフィだったが。
そんな愛らしい奥方を見て、
骨抜きにならずに何かを嗅ぎ取ったあたり、
起きぬけとは思えぬ冴えっぷり。(こらこら)
切れ長の鋭い双眸を怪訝そうに眇めたご亭主だったのへ、
おお朝からいい男だよなぁと満足そうに微笑んでから、

 「何だよ、チカチカ飾ってあるの観たくなってもいいじゃんか。」

ぷんぷくぷうと、柔らかそうな頬を不服げに膨らませれば。
そこへと貼り付いてたご飯粒をひょいと取ってやりながら、

 「確かにそういうのへ関心持つ奴ではあるけどな。」

窓からの陽が眩しくない角度で射し入って来てのこと、
柔らかな明るみに満たされたダイニングにて、
出勤用のシャツの襟元を白く浮き上がらせた姿も精悍な、
結構な男ぶりなご亭主様だが、

 “……そこで いきなり微笑うのなし。///////////”

してやったりとか、そのっくらいはお見通しなんだよとか、
そんな感じの、ちょっと意地悪っぽい笑いようだったのにね。
ふふんという気色を滲ませた男臭い笑いようを向けられて、
何だよ、何言い出すんだよと、ムキになるより
あややvvと ときめいていれば世話はない。
奥方のそんな心情まではさすがに気づかなんだらしいゾロはといえば、

 「どっちかといや、昼間の外出の方が好きだろうが。
  夜中に外ン出たって、すぐ飽きちまうくせによ。」

 「ううう…。////////」

言われてみればと、
図星だったのへ 判りやすくたじろいでから。
しょんぼり肩を落としつつ、

 「だってよ。」

上目遣いになった奥方が付け足したのが、

 「サンジが自分チへ飾ったイルミネーションの自慢ばっかするからさ。」

 「……ほほぉ。」

欧州の某所にて結構大きな邸宅にお住まいの、
ルフィのおっ母様にして経済界の陰の重鎮サンジェスト様。
日々の業務報告メールやスカイプでの会話などなどの傍らに、
そういった自分や家族の近況報告もして下さるのだが。
今年はこういうの飾ってるぞなんて、
お庭や屋敷の壁、華やかなディスプレイで飾り立て、
ナミさんやベルちゃんロビンさんと一緒に写り込んでる写真など
あれこれと見せられたのへ、
ついつい妙なライバル心が沸き立ったらしく。

 「よぉし、だったら俺が、
  あちこちのイベント会場の電飾を片っ端から撮って来てやる。」

電飾って あんた。(大笑)
何しろ主催者サイドだ、あちこちのクリスマスイベントを網羅してっから、
最新の仕掛けもたんと用意してっぞと。
勢いづいたように胸を張り、
任せとけと太鼓判を押すご亭主だったものの、

 『…お前が相手とはいえ、
  そやっておだてに乗ってしまって、
  社外秘までうっかり持ち出さんよう、気をつけてやらんとな。』

 『…………あ。』

後日、当のおっ母様からそんなクギを刺されていたことまでも、
ご本人へ伝えられたかどうかは、
武士の情けで、内緒ということで…。




     〜Fine〜  14.12.19.


  *手巻き寿司用の海苔で
   大きめのお握りをくるんで食べるのが
   最近の我が家の朝ご飯の定番です。
   さっさか食べられますからねvv
   ご飯大好きなもーりんとしては、
   話題の“おにぎらず”にも挑戦したい今日このごろ…。


ご感想はこちらvv**めるふぉvv

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